TOP > 今月のコラム一覧 > 76

相続放棄

 相続に関する相談で、よくあるのが、亡くなった方(被相続人)に多額の借入金があったというものです。

相続するのは、不動産などのプラスの財産だけでなく、借入金などのマイナスの財産も同様です。被相続人に借入金があった以上、相続人は貸主からの返済請求に対し、法定相続分を支払わなければなりません。

 遺言がない場合、まず、配偶者は、常に相続人となります。配偶者以外の相続人として、第1順位は、被相続人の子(子がいない場合は孫)、子または孫がいない場合、第2順位として、被相続人の直系尊属(父母)、第3順位として、兄弟姉妹が相続人になります。現行の法定相続分は、配偶者と子の場合、2分の1ずつ、配偶者と直系尊属の場合、配偶者3分の2、直系尊属3分の1、配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者は4分の3、兄弟姉妹は4分の1です。

 もっとも、相続放棄をすれば、貸主からの返済請求を拒否することができます。
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月内であれば、相続を放棄することができ(民法915条1項)、相続の放棄をすると、初めから相続人ではなかったことになります(民法939条)。

 被相続人の子が相続放棄をした場合、次の順位者である直系尊属(父母)が、直系尊属がいなければ兄弟姉妹が相続人になります。また、相続放棄をした子の子
(つまり被相続人の孫)は、相続人にはなりません。

 相続放棄をするには、家庭裁判所に3か月以内に、申述をしなければなりません。3か月を熟慮期間といいます。「相続の開始があったことを知った時」は、通常、被相続人が亡くなった時をいいますが、先順位の相続人がいる場合は、その者が相続放棄したときが後順位者の「相続の開始があった」時となります。 また、3か月の起算点について、判例のなかには、緩やかに判断するものもあります。

(匂坂)