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民事執行法改正について(3)~第三者からの情報取得手続の新設~

1 はじめに
 前回から時間が経ちましたが、民事執行法改正についてのコラム第3弾となります。
 前回のコラムでは、“債務者財産開示制度の改正”について触れさせていただきました。この制度は、改正によって使いやすくなりましたが、前回のコラムの最後に記載したとおり、実は欠点もある制度なのです。
 今回ご紹介する改正点は、この債務者財産開示制度の欠点を補完するために本改正で規定された“第三者からの情報取得手続の新設”についてです。どのような制度が新設されたか簡単に見ていきましょう!

2 債務者財産開示制度の欠点とは~債務者に開示させることのデメリット~
 債務者財産開示制度は、強制執行するために債務者に財産を開示させる制度です(そのまんまですね!)。このため、債務者財産開示制度を受けた債務者は、「これから強制執行がくる!」と簡単に予想できてしまいます。そうなると、悪い債務者が、強制執行されないよう財産を隠してしまう恐れがあります。
 また、債務者の資産管理能力が乏しい場合、債務者に悪気が無くても、いくつかの資産が抜け落ちた開示になってしまうこともあります。
 つまり、債務者財産開示制度の欠点とは、①事前に債務者に知られてしまうこと、②債務者の把握している財産しか開示されないことの2点にあります。

3 新設のポイント~資産情報を管理しているところから提供してもらう!~
 上記①②の欠点を補完するために新設された制度、それが、“第三者からの情報取得手続”です。この制度は、事前に債務者に知らせることなく、預貯金口座を調べることや、財産開示制度を行った上で、不動産や勤務先の情報を登記所や市町村等から取得できるようになる制度です。
 引出されやすい、預貯金に関しては、事前に知られないようにすることで、①の問題へ対応し、容易に売却しづらい不動産や勤務先に関しては、情報を管理しているところから情報提供してもらうことで、②の問題へ対応できるようにするものです。
(なお、勤務先が分かれば、そこから支払われる給与等を一定額差し押さえることができます!)

4 新設の結果
上記制度は、新設されたばかりであり、まだまだ課題のある制度です。しかし、従前の方法に比べて、財産を調査できる幅は、広がっております。これらの制度の活用や、弁護士のみが利用できる制度など、債権回収には様々な方法がありますので、お困りの際は、是非、長野第一法律事務所をご活用ください!
 次回の私のコラムでは、債務者財産を特定する制度以外の改正点について触れたいと思います。

(和手)