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少年事件

20歳未満の人が、刑事罰に触れる行為をした場合、「少年」として成人とは異なる扱いになります。
 その趣旨は、心身の発達が未成熟な少年については、成人とは異なった配慮が必要であり「処罰」よりも「保護」という観点が必要であるからです。

  1 「少年」の種類

  14歳以上で、罪を犯した少年・・・犯罪少年

  14歳未満で、罪に該当する行為を行った少年・・・触法少年
  (14歳未満の者に刑事責任を問うことはできないことになっていますが、問題を抱えた少年である可能性が高いため、少年法の適用対象となっています。)

2 少年事件の特徴

(1)家庭裁判所への事件送致
   逮捕、勾留といった身柄拘束、警察・検察による捜査は成人と同様ですが、基本的には、少年の事件はすべて家庭裁判所に送致されることになります(全件送致)。
   成人の場合は、検察官が公判請求(起訴)するかどうかを決定し、起訴された場合には地方裁判所または簡易裁判所で刑事裁判となりますが、少年事件の場合には、少年保護の知見が豊富な家庭裁判所に送致されることになります。一定の重大事件の場合には、家庭裁判所での少年審判によって、刑事裁判所へ送致されることがあります(逆送)。
 家庭裁判所での審判によって、保護観察、少年院送致、不処分、刑事裁判所への逆送などの処分が決定されます。


(2)身柄拘束の悪影響が大きいこと
   少年の身柄拘束には、成人に比べていっそうの慎重さが求められています(少年法48条)。
   これは、心身の発達が未熟な少年を身柄拘束することによる悪影響が大きいため、やむを得ない場合に限って身柄拘束することを認める趣旨です。
   また、学校や職場への影響も大きく、身柄拘束自体が貴重な更生資源を奪ってしまうことになりうるため、その点でも身柄拘束の影響は深刻です。

   ただし、実際には、少年であっても捜査機関はすぐに逮捕や勾留の請求をしますし、それをチェックする裁判所の審査も、それほど厳格に行われているわけではありません。抽象的な「罪証隠滅のおそれ」や「逃亡のおそれ」で身柄を拘束してしまうことが多く、勾留延長も「捜査が未了」といった捜査機関の言い分を受け入れて認めてしまうのが実情です。


(3)取調べへの対応に特に注意が必要であること
   社会経験や知識が不十分なため、捜査機関の言い分を鵜呑みにしたり、不正確な供述をそのまま調書化することを認めてしまうなどの危険性が成人より高いのが通常です。成人であっても、警察官から取り調べを受ければ、迎合的になってしまうことがあるのに、少年であればなおさらといえます。
   また、黙秘権や弁護人選任権の理解なども、少年には難しいでしょう。

(4)環境調整が特に重要であること
   事件を起こす少年はほとんどの場合家庭環境、交遊環境などに問題を抱えています。その環境が遠因となって事件を起こすことにつながっていることが多いといえます。また、精神疾患やなんらかの障害を抱えている場合もよくみられます。
   逆にいうと、そういった環境調整や病気への適切な対処で、事件の再発を防ぐことが可能であるといえます。実際に弁護士として少年と向かい合ってみると、ほとんど全員が素直で、もともと反社会的な性格の少年はいません。少年は人格の成熟が未熟のため、悪い意味でも良い意味でも、周囲の影響を受けやすいといえます(人格の可塑性、などといいます。)。
   したがって、犯罪行為そのものだけでなく、その環境に潜む遠因を調整することが、大変重要になります。逆にいえば、そういった環境調整を抜きにして、表面的に叱責したり、反省を促す、少年審判を上手にやり過ごす、ということは、根本的な問題解決にはなりません。

3 弁護人、付添人の重要性

  少年は社会経験や知識の不足、人格の未熟性から、特に防御能力が低い状況にあります。
  したがって、弁護人(付添人)のサポートが大変重要になります。
  また、少年審判においても被害弁償(示談)は重視されていますので弁護人(付添人)による被害弁償活動は早期に始めることが重要です。

     少年事件については、早期に、弁護士に依頼されることをお勧めします。

(一由)