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裁判・司法とシネマ 3 「ア・フュー・グッドメン」 2013年1月

 米軍キューバ海軍基地で発生した海兵隊員の不審死事件、犯人として身柄拘束されたダウニー一等兵とドーソン兵長の弁護人として選任されたのはキャフィー中尉(トム・クルーズ)でした。中尉は、著名な法廷弁護士を父に持つハーバード・ロースクール出身のエリートですが、検察官と慣れ合って取引で手早く仕事を済ませ、勤務時間中に野球に興じる問題弁護士でした(米国では軍隊内の違法行為を審理する軍事裁判所があり、キャフィー中尉はそこに勤務する弁護士(かつ軍人)という設定です)。

 中尉は、二人の説明する犯行動機に疑問を感じ、その背後に、指揮官ジェセップ大佐(ジャック・ニコルソン)による殺害命令(コードR)が存在したことを確信します。
 軍隊では上官の命令は絶対服従が鉄則です。そのような環境で上官から同僚の殺害を命じられた二人に罪を問うことが許されるのか、中尉は、法廷で二人の無罪を主張する弁護方針を立てます。共同弁護人のギャロウェイ少佐(デミ・ムーア)、ウェインバーグ大尉(ケヴィン・ポラック)と協力し、裁判に臨みますが、頼みの綱となる証拠がジェセップの圧力で次々と隠滅され、ついに決定的な証人も失います。
裁判に敗訴すれば、二人が有罪になるのみならず、エリートコースを歩む自分自身に対しても、軍の有力者であるジェセップ大佐からの報復が行われることは確実です。中尉は絶望的な苦境に陥り「こんなはずじゃなかった」と弱音を吐き、経験が薄く法廷での失策を繰り返すギャロウェイ少佐とも仲たがいし、弁護団も崩壊の危機を迎えます。
中尉は、最後の秘策を隠し球に、ジェセップ大佐の証人尋問に臨み、起死回生の逆転勝利を狙うのですが・・・その結末は・・・。

 この映画の圧巻は、キャフィー中尉のジェセップ尋問のシーンです。「コードR」(殺害命令)を自白させようとジェセップを追及するトム・クルーズと「軍隊には軍隊の掟がある」と主張するジャック・ニコルソンの迫真の凄まじい演技は必見です。
ラストシーンも非常に印象に残る名場面となっていますので、ぜひ御覧ください。

(文責:一由)