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相続税に関するハナシ②

 相続税は、申告納税制度が採用されています。つまり、相続人が自ら税務署に申告するタイプの税金なのです。

相続税の申告 イメージ写真 申告には、期限が設定されており、被相続人が死亡した日から10か月以内となっています(厳密には「相続開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」ですが、安全を期して上記のように理解しておきましょう)。

この10か月以内という制限は、遺産がシンプルでかつ相続人間で遺産の分け方に意見の食い違いがない場合にはそれほど問題はありません。しかし、相続財産が複雑多岐にわっていたり、遺産の分け方について意見が食い違い、まとまらない場合などは注意を要します。
 そのような場合でも、税務署は待ってはくれません。遺産分割の協議がまとまらなくても、10か月以内にいったん申告と相続税の納付を済ませないといけません(これをしないと延滞扱いとなり、滞納処分=差押えなどの措置を受けてしまうことになります。)。「未分割」の状態での申告は、すべての相続税課税対象財産を法定相続分で計算し、各人に割合で割り付け、相続税を計算し、算出された金額をいったん納税することになります。その後、遺産分割の協議がまとまった場合には、その時点で修正申告ないし更正の請求という手続きを行い、実際の遺産分割に応じた調整を行います。

注意しなければならないのは、未分割状態での納税においては、配偶者の税額軽減や小規模宅地の評価減といった特例が使えない、ということです。
例えば、相続人の中に配偶者がいる場合には、配偶者の法定相続分(その額は1億6000万円未満のときは1億6000万円)までは税額軽減の制度が使えるのですが、未分割の状態での申告では、この制度を使って、納付する税金を安くすることができないのです。つまり、いったんお金を用意して、相続税を現実に納付しないといけないことになります(後で還付を受けることになります。)。
これは、場合によってはかなりの負担となりますので、納税資金の算段を早めに考えておく必要があります。

 拙速に遺産分割協議を行うのも考えものですが、上記のようなリスクもありますので、遺産分割は早めに済ませて解決することを意識したほうが良いのです。

(一由)