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民事執行法改正について(1)~民事執行法とは~

1 はじめに
 令和2年4月1日より、改正された民事執行法が施行されました。私のコラムでは、その改正について今後触れたいと思います。
 もっとも、民法や刑法といった良くニュースでも取り上げられる法律と違い、「民事執行法って何?」「そもそも何のための法律?」という疑問も多くあるでしょうから、まず、民事執行法がどのようなものか、本コラムで簡潔にお話したいと思います。

2 民事執行法とは~損害回復の流れ~
(1) トラブル発生と権利義務
 現代社会には、様々なトラブルが存在します。「物を売ったのにお金を払ってくれない」「家を貸しているけど、家賃が支払われない」「交通事故に遭ってけがをさせられた」等です。
 これらに関して、
・「物を売った人はお金を支払ってもらえる(買った人はお金を支払う必要がある)」
・「賃貸人は家賃を支払ってもらえる(借りている人は家賃を支払う必要がある)」
・「けがをさせられた人は、事故を起こした人から治療代などを支払ってもらえる(事故を起こした人は治療代などを支払わなければならない)」
 といった権利・義務を書いているのが、“民法”(あと、契約書)です。民法や契約書上権利がある者は、義務がある者に対して、権利や義務を実現させるよう請求することができます。

(2) 権利義務の確定
 では、民法上(ないし契約上以下略)権利・義務が定められていれば、それでトラブルは解決するのでしょうか?
 残念ながら、民法上権利義務があってもトラブルは発生し、権利義務が実現されないことは多くあります。「そんな契約していない」「既に支払ったはずだ」「もっと少ない額だ」といった場合です。このような場合、社会が未発達な場合は、「なら力ずくでも」となりますが、現代社会では許されません。そこで、話し合ってもトラブルが解決しない場合、現代社会では、裁判、つまり国家権力を背景に権利義務を確定させることが求められます。これが、民事訴訟です。
 民事訴訟を行う際、「どこで行うか」「どのように行うか」といったルールが決まっていないと、お互いに全力を尽くした裁判をすることができません。そこで、民事訴訟のルールを定めた法律として、“民事訴訟法”が存在します。そのため、日本で民事裁判を行う場合は、民事訴訟法に従う必要があります。

(3) 確定した権利義務の実現
 ではでは、権利・義務を定めた“民法”、民事訴訟のルールを定めた“民事訴訟法”があればトラブルは解決するのでしょうか?
 裁判で、国家権力である裁判所から、「あなたには、支払う義務がある。支払いなさい。」と言われれば、払う人もいます。しかし、中には、「いやだ、いやだ払いたくない」「お金なんて持ってない」という人もいます。この場合、未発達な社会なら、「なら力ずくでも・・・」となりますが、先程と同じように現代社会では、力ずくの解決は許されていません。
 「せっかく、お金と時間をかけて裁判したのにそれじゃあ意味ない」という声が聞こえてきそうです。では、民事訴訟をしたのは無駄だったのでしょうか。
 答えはNOです。民事訴訟をして勝つと判決などの債務名義がもらえます。この務名義は、裁判で決まったことが書いてあるのですが、これを裁判所に持っていき ますと、民事執行つまり、国家権力を利用した強制執行をすることができます。つまり、自力で相手の家から財産を持ってきてお金を得ることはできませんが、強制的に相手の預金から支払わせたり、相手の土地を競売に掛けたりすることができるようになります(ただし、実際に財産が存在することを明らかにする必要はあります)。
 前置きが長くなりましたが、この強制執行・民事執行に関して、ルールやどのような方法を行えるかを定めたものが私のコラムのテーマ“民事執行法”になります。 要約しますと、“民事執行法”は、民事訴訟で権利義務が認められているにも関わらず、それが実現されなかった場合に実現させるための民事執行のルールを定 めた法律です。
 次回の私のコラムでは、この“民事執行法”について、今年(令和2年)に改正された事項に関して触れたいと思います。

※民事訴訟と刑事訴訟
 上記の民事訴訟とは、別に刑事訴訟があります。民事訴訟は民法などをもとに、個人が、個人・企業等に権利・義務の実現を求めるものです。他方、刑事訴訟は、刑法などの法律に基づき、国家が個人や企業等を罰するものです。そのため、犯罪などの被害を受けた人が、その損害を償ってもらうのは、民事訴訟であり、刑事訴訟ではありません(刑事訴訟で罰金が支払われても国家に帰属することになります)。犯罪被害を受けた場合の特例もありますが、原則損害の回復と相手の処罰は分けて考える必要があります。

(和手)