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建設業特集14 建設工事の施工①~施工体制の確認と備付け~
今回からは、建設工事施工の際の注意点について、説明していきます。
建設工事は、ゼネコンから専門工事業者まで様々な事業者の協力によって、実現していきます。このような中で、適正かつ効率的な施工を実現するためには、施工体制の把握が必要不可欠となりますので、本件では、施工体制について、説明していきます!
※ 以下、「建設業法」は、「法」、「建設業法施行規則」は、「規則」といいます。
1 施工体制把握の必要性
まず、施工体制を把握する必要がある事業者は、発注者から直接請け負った元請業者になります。
いくら、下請業者等に知見があったとしても、施工体制の把握は、元請業者が行う必要があるので、注意しましょう。
元請業者が施工体制を把握していない場合、工事が円滑に進まないだけでなく、品質、工程、安全などの面でトラブルが発生するおそれや、不適格な事業者が参入するおそれ、一括下請や手抜き工事のリスクもあります。
このため、元請業者が施工台帳を整備し、施工体制を把握する必要があります。
2 施工体制台帳記載事項
施工体制台帳に記載する事項は、以下のものになります(法24条の8、規則14条の2)。
① 下請負人の商号又は名称
② 当該下請負人に係る建設工事の内容及び工期
③ 作成建設業者の許可を受けて営む建設業の種類及び健康保険等の加入状
況
④ 作成建設業者が請け負った建設工事に関する次に掲げる事項
A 建設工事の名称、内容及び工期
B 発注者と請負契約を締結した年月日、当該発注者の商号、名称又は氏名
及び住所並びに当該請負契約を締結した営業所の名称及び所在地
C 発注者が監督員を置くときは、当該監督員の氏名及び法第十九条の二
第二項に規定する通知事項
D 作成建設業者が現場代理人を置くときは、当該現場代理人の氏名及び
法第十九条の二第一項に規定する通知事項
E 主任技術者又は監理技術者の氏名、その者が有する主任技術者資格又
は監理技術者資格及びその者が専任の主任技術者又は監理技術者である
か否かの別
F 監理技術者の行うべき法第二十六条の四第一項に規定する職務を補佐
する者を置くときは、その者の氏名及びその者が有する監理技術者補佐
資格
G 建設工事の施工の技術上の管理をつかさどる者で主任技術者若しくは
監理技術者又はヘの監理技術者補佐以外のものを置くときは、その者の
氏名、その者が管理をつかさどる建設工事の内容及びその者が有する主
任技術者資格
H 建設工事に従事する者に関する氏名、生年月日及び年齢、職種、社会保
険の加入状況、被共済者に該当するか否か、安全衛生に関する教育の有無
内容、建設工事に関する知識・技術・資格
I 在留資格とその状況
⑤ 下請負人の住所、建設業許可の番号、建設業の種類、健康保険等の加入状
況
⑥ 下請工事の名称、下請契約の締結日、監督員、現場代理人、主任技術者等
を設置する際の通知事項、資格、作成建設業者の営業所の名称及び所在地
⑦ 下請工事に従事する者についてのH・Iの事項
以上を記載の上、契約書や資格の証明書等を添付する必要があります。
なお、施工体制台帳を1から作成することは難しいので、国土交通省が作成しているここのファイルを利用するのが簡便です。
3 施工体制台帳の備付け・提出について
以下の場合、施工体制台帳を作成し、備付け・提出する必要があります。
(1)法24条の8の場合(民間工事)
ア 施工台帳作成義務者
発注者から直接工事を請負、5000万円以上の工事(建築一式工事については、8000万円以上)を下請で出す特定建設業者は、施工台帳作成義務を負います。
- 金額は、令和7年4月1日時点のものです。頻繁に改正されるので注意が必要です。
イ 作成時期
工事代金が上記金額以上になったときに作成が必要です。
ウ 作成後の対応
施工台帳作成後、工事現場ごとに備え付ける必要があります。また、発
注者から閲覧請求があった場合は、閲覧させる義務があります。
(2)公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律15条の場合(公共工事)
ア 施工台帳作成義務者
発注者から直接工事を請負、下請を出す建設業者は全て作成義務者になります。
イ 作成時期
下請契約締結時点で作成する必要があります。
ウ 作成後の対応
施工台帳の写しを発注者へ提出する必要があります。
4 再下請負通知について
施工台帳が作成される工事を受けた下請業者が、さらに孫請け業者に下請を出す場合は、再下請の内容や工期などを元請業者に通知する必要があります(法24条の8)。
元請業者は、上記再下請負通知により、施工体制を把握するとともに、下請業者等に対し、再下請負通知書を適切に提出するよう指導する必要があります。
5 施工体系図の掲示について
施工台帳を作成する義務を負う元請業者は、各下請負業者の施工分担関係を示した施工体系図を作成する必要があります。
また、作成した施工体系図は、民間工事の場合、工事現場の見やすい場所に、公共工事の場合、工事関係者の見やすい場所及び公衆の見やすい場所に掲示する必要があります。
再下請負通知や施工体系図についても、ここに国土交通省が作成した書式がありますので、活用ください。
施工台帳の設置や施工体系図の掲示を怠ると監督処分の対象になりますので、元請業者は特に注意しましょう。
次回も、施工段階の注意点について説明を行いたいと思います。
長野第一法律事務所では、建設請負契約について、知識が豊富な弁護士が相談を受け付けています。元請業者・下請業者のいずれであっても、契約や施工に不安のある方は、所属弁護士が相談に対応しますので、是非長野第一法律事務所にご相談ください。(和手)