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LGBT理解増進法における事業者の役割

2023年6月、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律、いわゆるLGBT理解増進法が施行されました。

事業者はこの法律にどのように向き合うことを求められているのか、解説します。

 

1 LGBT理解増進法の目的と理念

同法は「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に寛容な社会の実現に資することを目的」として定められたものです。

同法では「全ての国民が、その性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念」を基本理念としています。そして、事業主がその基本理念に則って理解増進に努めることを定めています。

 

2 事業主はどのように向き合うべきか

 同法では「事業主は、その雇用する労働者に対し、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する理解を深めるための情報の提供、研修の実施、普及啓発、就業環境に関する相談体制の整備その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする」と定められています。

必要な措置の具体例は示されておらず、就業環境そのものに関する措置が必要な措置に含まれるのかは明らかではありません。

もっとも、就業環境に関する相談体制の整備をしておきながら、就業環境に関する措置をしないということは考えられませんので、これも必要な措置に含まれると考えられます。

 

3 就業環境に関する措置

 就業環境に関する措置として参考となる事例として最高裁判所令和5年7月11日判決が挙げられます。

 この判例は、生物学的な性別が男性であり性同一性障害である旨の医師の診断を受けている一般職の国家公務員である者に対し、その執務室がある庁舎のうち上記執務室がある階とその上下の階の女性トイレの使用を認めず、それ以外の階の女性トイレの使用を認める旨の処遇が実施されている事案において、当該事案の事情を考慮すれば、そのような処遇は違法であると判断したものです(使用制限が常に違法になると判断したと誤解されることがありますが、あくまで当該事案の事情の下では違法と判断されたに止まります)。

 このように、特定のアイデンティティを有する方のみに不利益な処遇をした場合、その処遇が違法とされる可能性があります。

 その不利益の大きさや同僚職員の意見、職場の物理的な状況なども含めて慎重な判断が必要だと言えます。

 

 

弁護士は多種多様なトラブルに対処した経験がありますので、トラブルを予防するためにどのような対応をしておけば良いか、ということもよく理解しています。

性的指向やアイデンティティに関する配慮をしてほしいと従業員から相談されたが、どう対応すればよいか分からない、とお困りの際はぜひ弁護士法人長野第一法律事務所へご相談ください。

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