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宗教法人法の基礎と実務上のポイント(4)重要財産の処分等を行う場合の公告義務
宗教法人法23条では、宗教法人が、以下の重要行為を行おうとするときに、少なくとも1か月前に公告を行う義務を定めています。
■ 公告が必要となる行為(23条各号)
① 不動産や財産目録に掲げる宝物の処分・担保供与
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不動産の売買・贈与・交換等
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担保設定(抵当権の設定等)
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財産目録に記載の宝物(仏像等)の処分・担保の設定
② 一時的な借入を除く借入・保証(長期的・重要な債務負担)
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会計年度内に返済しない借入
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他者の債務の保証
③ 主要な境内建物の新築・改築・増築・移築・除却・著しい模様替
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本堂、社殿、教会堂など主要建物の大規模変更
④ 境内地の著しい模様替
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地形改変や用途変更等、境内地の本質的変更
⑤ 主要建物・境内地の用途変更や宗教目的外利用
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宗教活動以外の目的への転用
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コミュニティ施設化、賃貸利用など
■ 公告のタイミング
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その行為を行おうとする「少なくとも1か月前」に
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信者その他の利害関係人に
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行為の要旨を公告し完了する必要あり
■ 公告しなくてもよい例外(但書)
以下の行為は公告不要となる場合があります。
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(3)~(5)号の行為が「緊急の必要」または「軽微」な場合
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(5)号の行為が一時的な期間に限られる場合
→ 「軽微」や「緊急」の判断は慎重に行う必要があり、所轄庁との事前相談が望ましいケースも多いです。
2. 公告方法と実務上の注意点
■ 公告方法
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規則に定めがある場合はそれに従う
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典型例:官報・新聞・掲示(10日間程度とすることが多いようです)・宗教法人のウェブサイトへの掲示
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公告は「一般人が認識し得る状態」であることが必要 紛争を防ぐために、適切な証拠化も検討する必要あり
■ 注意点
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23条の公告は事後ではなく「事前公告」
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例外(緊急・軽微)の判断は厳格
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財産管理上、公告漏れは、法的紛争につながりやすい
3. まとめ
宗教法人法23条は、宗教法人の重要財産の処分や建物の大規模変更など、組織の性格を左右する行為を透明化するための中核規定です。
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重要行為は原則として1か月前に公告が完了している必要があります
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信者・利害関係人の信頼維持のためにも不可欠です
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公告漏れ、軽微判断の誤りに注意しましょう