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介護施設利用契約書における「身元保証」とは
介護施設を利用する際、契約書に「身元保証人」という条項が記載されていることは少なくありません。
しかし、この身元保証とは何を意味し、どこまでの責任を負うものなのでしょうか。また、身元保証人がいない場合、施設利用は本当にできないのでしょうか。
本記事では、介護施設利用契約書における「身元保証」の法的な位置づけと、実務上の注意点を解説します。
1 介護施設における「身元保証」が求められる理由
介護施設が身元保証人を求める背景には、主に次のような理由があります。
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利用料等の支払が滞った場合の担保
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入院・死亡時など、緊急時の連絡先
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身体・所持品の引取り、退去時の対応
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契約解除や未払い精算時の調整
つまり、施設側としては、利用者本人だけでは対応が難しい場面に備え、実務上の窓口を確保したいという意図があります。
2 「身元保証」と「連帯保証」は同じではない
契約書に「身元保証人」と書かれていても、その法的性質は契約内容次第です。
多くのトラブルは、「身元保証人=連帯保証人」と誤解されている点から生じます。
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連帯保証人
利用料等の債務について、本人と同一の責任を負う -
身元保証人
身上関係の支援や連絡窓口を担う趣旨にとどまる場合もある
問題は、契約書の中で
「利用料その他一切の債務を連帯して保証する」
といった文言が記載されているケースです。
この場合、名称が「身元保証人」であっても、実質的には連帯保証契約となり、法的責任は非常に重くなります。
3 2020年改正民法との関係(極度額の定め)
民法改正(2020年施行)により、個人が保証人となる場合、将来発生する不特定の債務については、
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極度額(上限額)を定めなければ保証契約は無効
とされています(民法465条の2)。
介護施設利用契約においても、
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月額利用料
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追加費用
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原状回復費用 など
が包括的に保証対象とされている場合、極度額の記載がない保証条項は無効となる可能性があります。
施設側が旧来の契約書を使用している場合、見直しが必要です。
4 身元保証人がいないと入所できないのか
近年、「身元保証人がいない高齢者」が増加しています。
厚生労働省も、
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身元保証人がいないことのみを理由に
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介護サービスの提供を拒むこと
は望ましくないとの考え方を示しています。
実務上は、
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保証会社の利用
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成年後見人等による対応
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緊急連絡先のみの設定
といった代替手段を用いる施設も増えています。
「身元保証人がいなければ契約不可」と一律に定めることは、契約自由の原則との関係でも慎重な検討が必要です。
5 トラブルを防ぐためのチェックポイント
利用者・家族側の注意点
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保証の範囲が支払義務まで含むのかを確認
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極度額(限度額)の記載があるか
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「連帯保証」という文言がないか
介護事業者側の注意点
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身元保証の目的を明確化
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不要に広い保証義務を課していないか 極度額の明示をしているか
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民法改正に対応した契約書になっているか
6 まとめ
介護施設利用契約における「身元保証」は、
名称だけでは法的責任の重さは判断できません。
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実質が連帯保証になっていないか
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民法改正に適合しているか
を丁寧に確認することが、利用者・事業者双方の安心につながります。
契約書の文言次第で、思わぬ法的責任を負うこともあります。
少しでも不安がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。
弁護士法人長野第一法律事務所では、介護事業者・介護事故の被害者等のご相談に対応しています。お気軽にご相談ください。