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最高裁が勾留を取り消す 特別抗告に対し職権で破棄した事案
一度は認められた勾留を最高裁判所が取り消した重要な決定が出ましたのでご紹介します。
令和7年(し)第1043号 勾留請求却下の裁判に対する準抗告の決定に対する特別抗告事件 令和7年11月7日 第一小法廷決定
1 事案の概要
医療機器メーカーの営業所長であった被疑者が、国立大学医学部付属病院の医師に対し、その職務に関する不正な利益(賄賂)を供与したという贈賄罪の疑いの事案です。
2 経緯
検察官の勾留請求に対し、最初の裁判官(原々審)は勾留の必要性がないとして勾留請求を却下しました。これを不服とした検察官が準抗告を申立て、その結果、裁判所(原審)は、勾留の必要性が認められ、罪証隠滅のおそれが高度であるとして、原々審(最初の裁判官)の裁判を取り消し、勾留を認めました。被疑者にとっては、逆転敗訴のような形となったわけです。
これを不服とした弁護側が、最高裁判所に特別抗告を申し立てました。
3 判旨
最高裁判所は、原審の決定を取り消し、勾留請求を却下した原々審(最初の裁判官)の裁判に誤りがあるとはいえないとして、準抗告を棄却しました。
理由の要約は以下のとおりです。
本件において勾留の必要性の判断を大きく左右する要素は、罪証隠滅の現実的可能性の程度であると考えられる。原々裁判は、罪証隠滅の現実的可能性を肯定しつつ、客観的証拠の収集及び客観的証拠を踏まえた関係者らからの事情聴取が相当に進んでいること、被疑者自身も数ヶ月にわたって任意の取調べにおおむね応じていたこと、被疑者が既に会社を退職しており、同社関係者が従前の供述を翻して被疑者に有利な供述をするというような強い関係性まではうかがわれないことに鑑みて、罪証隠滅の現実的可能性が高くないと判断したものと認められる。原々裁判の判断は、罪証隠滅の現実的可能性の程度を基礎付ける事情を具体的に検討した上でされたものであって、その判断理由にも一定の合理性があるといえる。
ところが、原決定は、罪証隠滅の現実的可能性の程度について、原々裁判が判断の基礎としたものとほぼ同一の事情を指摘するのみで、これらの事情に関する原々裁判の評価が不合理であるとする理由を実質的に示すことができていないと言わざるを得ず、原々裁判と異なる判断をした理由を示したものとはいえない。
そうすると、勾留の必要性を否定した原々裁判を取り消して、勾留を認めた原決定には、刑訴法60条1項、426条の解釈適用を誤った違法があり、これが決定に影響を及ぼし、原決定を取り消さなければ著しく正義に反するものと認められる。
4 解説
憲法違反・判例違反を理由に最高裁判所に特別抗告をすることができます(刑事訴訟法433条、405条)。また同法411条の上告理由を準用し、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは職権破棄することが認められています(最高裁昭和26年4月13日決定・刑集5巻5号902頁)。
本決定では「刑訴法60条1項、426条の解釈適用を誤った違法」があるとして、原決定を破棄しました。
本件において最高裁は、罪証隠滅の現実的可能性の程度を基礎付ける事情を具体的に検討した上でなされた最初の裁判官の判断には一定の合理性があるとしました。その上で、原決定は、最初の裁判官の決定の評価が不合理であるとする理由を実質的に示すことができていないとしています。
最高裁は、勾留に関する平成26年11月17日決定・判タ1409号123頁や保釈に関する平成26年11月18日決定・刑集68巻9号1020頁でも、原々審の判断が不合理であるとする理由が具体的に示されていないとして原決定を取り消しており、本件も同様の考え方が示されたと言えます。
5 最後に
特別抗告が認められることは稀ですが、本件のように勾留を認めた決定を取り消せることもありますので、身体拘束を解くために諦めないことが大切です。
ご家族が逮捕・勾留されてお困りの際は、弁護士法人長野第一法律事務所へご相談ください。(岡田)