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採用内定取消しのリスクとは ― 企業が知っておくべき法的ポイントと実務対応 ―
採用活動において「内定」という用語はよく使われますが、その法的意味を正確に理解している経営者や人事の担当者は意外に少ないのではないでしょうか。
内定後、そのまま何事もなく就労が進めば問題はありませんが、ときに「内定」については大きな紛争の原因となることもあります。
むしろ、内定を出した後の対応を誤ると、企業にとって大きな法的リスクとなる場面もあります。
本記事では、企業側が押さえておくべき採用内定取消しの法的リスクと、トラブルを避けるための実務上の注意点を解説します。
1 「内定」は法的にどのような意味を持つのか
まず重要なのは、採用内定の法的性質です。
判例・実務上、採用内定は
「始期付・解約権留保付の労働契約」
と解されるのが一般的です。
つまり、
内定通知の時点で
労働契約はすでに成立している企業が一方的に内定を取り消すことは
原則として許されない
ということが前提になります。
「まだ入社していないから自由に取り消せる」という理解は、法的には誤解といえます。
2 内定取消しが問題となる典型ケース
(1)業績悪化・採用計画の見直し
「業績が悪化した」「人員計画が変わった」という理由だけでの内定取消しは、
原則として無効と判断される可能性が高いです(整理解雇と同様の厳しい要件が要求され、これを満たすことはまれです)。
特に、
内定後、相当期間が経過している
内定者が他社の内定を辞退している
といった事情がある場合、企業側の責任は重く見られます。
(2)内定者の経歴詐称・虚偽申告
一方で、内定取消しが有効とされやすい典型例もあります。
例えば、
学歴・職歴の重大な詐称
資格の虚偽申告
犯罪歴等の重要な不告知(職務内容との関連が強い場合)
ただし、「軽微な記載ミス」や「業務に影響のない事項」まで理由にすると、
取消しが無効と判断されるリスクがあります。
「採用判断に重大な影響を与えるか」が主要な判断基準です。
(3)健康状態・適性を理由とする取消し
健康上の理由による内定取消しは、特に慎重な判断が必要です。
配置転換や業務内容の調整が可能でないか
就業上の配慮で対応できないか
といった検討をせずに取消すと、差別的取扱いとして違法と判断される可能性もあります。
3 内定取消しが違法とされた場合のリスク
内定取消しが無効と判断された場合、企業は以下のリスクを負います。
・地位確認(労働契約上の地位があることの確認)
・賃金相当額の支払請求
・慰謝料請求(精神的苦痛)
・企業イメージ・採用ブランドの低下
特に近年は、SNS等による reputational risk(評判リスク)も無視できません。
4 企業が取るべき実務対応ポイント
(1)内定通知書・内定承諾書の記載を整備する
内定取消事由を具体的かつ限定的に明示
抽象的な「会社の都合による取消し」規定は避ける
曖昧な条項は、いざというときに企業を守ってくれません。
(2)内定取消しは「最終手段」と考える
取消しを検討する前に、
配置転換
入社時期の調整
業務内容の変更
など、代替策の検討記録を残すことが重要です。
(3)取消しを行う場合は、慎重なプロセスを
事実関係の十分な確認
内定者への説明と弁明の機会付与
社内での意思決定プロセスの整理
これらを欠くと、手続面の不相当性を理由に違法とされる可能性があります。
5 内定後こそ「法的リスク管理」を
採用内定は、企業にとっても内定者にとっても重要な約束です。
内定は「仮」ではない
内定取消しは例外的にしか認められない
事前の制度設計と慎重な対応が最大のリスクヘッジ
採用トラブルを未然に防ぐためにも、
内定通知書や内定取消条件の整備や、取消し判断の前段階での法的チェックを強くおすすめします。
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