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犯罪被害と法人税~損金・益金の算入について

1 法人税における「損金」とは

法人税では、会社の利益に対して課税がされますが、その計算は次のような構造です。

所得 = 益金 − 損金

ここでいう損金とは、簡単に言えば

  • 事業のために生じた費用

  • 損失

などを意味します。

典型例としては、以下のようなものがあります。

  • 仕入費用

  • 人件費

  • 減価償却費

  • 貸倒損失

  • 災害による損失

では、犯罪被害による損害はどう扱われるのでしょうか。


2 犯罪被害による損害は原則として損金算入できる

結論からいうと、事業に関連して生じた犯罪被害による損害は、原則として損金算入が可能とされています。

具体例としては次のようなケースです。

社員による横領

経理担当者が会社資金を横領した場合
横領された金額は損失として損金算入可能

詐欺被害

取引先から架空取引などで金銭をだまし取られた場合
詐欺被害額は損金算入可能

盗難

会社の金庫や商品が盗まれた場合
盗難による損失は損金算入可能

これは、これらの損失が事業活動に伴って発生した損害と評価されるためです。


3 損金算入のタイミング(重要)

実務上もっとも問題になるのがいつ損金計上できるかという点です。

原則としては、

損害が確定した事業年度

に損金算入することになります。

例えば、

  • 横領が発覚した

  • 回収が事実上不可能と判断された

といった時点です。

ただし、

  • 損害賠償請求をしている

  • 保険金請求をしている

場合は、回収可能性の判断が必要になります。


4 加害者から回収できた場合

後に加害者から損害賠償金を回収できた場合、その金額は

益金(収益)

として計上されます。

つまり、

  • 被害時 → 損金

  • 回収時 → 益金

という処理になります。

なお、加害者に対する損害賠償請求権が発生しているため、その請求権相当額について、「益金」として算入すべきかどうかも問題になります。

この点、最高裁昭和43年10月17日判決は、法人の会計担当役員で代表取締役であった者が、業務上保管していた金銭を着服し、経費に仮装して計上していた事案において、「横領行為によつて法人の被つた損害が、その法人の資産を減少せしめたものとして、右損害を生じた事業年度における損金を構成することは明らかであり、他面、横領者に対して法人がその被つた損害に相当する金額の損害賠償請求権を取得するものである以上、それが法人の資産を増加させたものとして、同じ事業年度における益金を構成するものであることも疑ない 」と判示しています。

 

 損害賠償を回収できるかどうかもわからないのに計上するのは釈然としないものがありますよね。しかし税法上はそのようになっています。

 損害賠償請求権相当額を益金として計上するにしても、どの事業年度の益金として扱うかについて、上記の最高裁判決はいわゆる「同時両建説」を採用しているといわれています。

 これに対し「異時両建説」という見解もあり、その後の高裁判例では、事案によって異時両建説の考え方をとっているものもあります。

 課税実務においては、昭和55年の法人税基本通達改正に際して、その相手方がその法人の役員又は使用人以外の「他の者」である場合には、異時両建説を採用しています。

 不法行為の相手方が当該法人の役員又は使用人であっても、異時両建説により損益計上を行うべきとの指摘をする見解も有力であるようです。

 実際にそのような事案が発生した場合には、判例の見解、通達、課税実務の見解を踏まえ、当該事案に即して慎重に検討する必要があるでしょう。

 


5 役員や関係者による不正の場合の注意点

注意が必要なのは、役員による横領などの場合です。

税務上、次のような判断が問題になることがあります。

  • 会社が役員の責任追及をしていない

  • 損害賠償請求をしていない

  • 実質的に会社が損害を容認している

このような場合、税務調査では

役員賞与と認定される可能性

があります。

役員賞与と認定されると

  • 損金不算入

  • 追加課税

というリスクが生じます。

そのため実務では

  • 内容証明による請求

  • 損害賠償請求訴訟

  • 刑事告訴

など、適切な責任追及を行うことが重要です。


 

6 弁護士に相談すべき理由

犯罪被害が発生した場合、企業には

  • 刑事対応

  • 損害賠償請求

  • 税務処理

  • 社内不正対応

といった複数の問題が同時に生じます。

特に

  • 横領

  • 詐欺

  • 内部不正

の場合には、

  • 証拠保全

  • 責任追及

  • 回収手続

を適切に進めることが重要です。

弁護士が早期に関与することで、

  • 損害回復の可能性を高める

  • 税務上の不利益を避ける

  • 再発防止体制を整える

といった対応が可能になります。


まとめ

犯罪被害による企業の損害は、一般的に次のように整理できます。

  • 犯罪被害による損失は原則として損金算入可能

  • 損害確定の時期が重要

  • 後に回収した場合は益金計上

  • 損害賠償請求権相当額の扱いについては、慎重に検討
  • 役員不正の場合は役員賞与認定のリスク

犯罪被害は企業にとって大きな経営リスクです。
被害が発生した場合は、刑事・民事・税務の観点から早期に専門家へ相談することが重要です。

 

 弁護士法人長野第一法律事務所では、企業内の不祥事問題にも対応しています。

 ご相談ください。

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