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共同相続人の相続税と連帯納付義務について
相続の相談を受けていると、「相続税はそれぞれ自分の分だけ払えばよい」と理解されている方が少なくありません。感覚としてはもっともですが、法律上は少し違います。
相続税については、共同相続人の間に連帯納付義務という仕組みが置かれており、場合によっては他の相続人の税額まで負担しなければならないことがあります。
この点は実務上のトラブルにもつながりやすいため、基本的な考え方と判例の立場を確認しておきたいところです。
連帯納付義務の中身
相続税法では、各相続人は自分の取得分に応じた税額を負担することが原則です。ただし、それに加えて、他の相続人の相続税についても連帯して納付する義務を負うとされています。
言い換えると、誰かが納税しない場合、税務署は他の相続人に対してその不足分を請求することができます。
例えば、相続人が2人で、それぞれ100万円ずつの相続税が発生しているケースを考えます。一方が支払わなかった場合、もう一方に対して合計200万円の納付を求められる可能性があります。
この点は、感覚とずれる部分ですので注意が必要です。
では、立て替えた人はどうなるのか
このような場面で問題になるのが、「他人の税金を支払った場合、最終的にどう処理されるのか」という点です。
ここで参考になるのが、最高裁昭和55年7月1日判決です。
この判決は、連帯納付義務の性質について、対外的な関係と内部的な関係を区別して整理しています。
すなわち、税務署との関係では連帯して責任を負う一方で、相続人同士の間では、最終的には各自が負担すべき割合に応じて精算されるべきものとされています。
したがって、他の相続人の分を支払った場合には、その相手方に対して求償することができる、という結論になります。
実務上の難しさ
もっとも、この「求償できる」という点は、あくまで法律上の話です。
実際には、
- 相手に資力がない
- 相続人間の関係が悪化している
- 連絡が取れない
といった事情から、回収が困難になることも少なくありません。
そのため、「後で請求すればよい」と安易に考えるのは危険です。
遺産分割の段階での工夫
こうしたリスクを避けるためには、遺産分割の段階での整理が重要になります。
例えば、
- 誰がどの税額を負担するのか
- 納税資金をどの財産から確保するのか
といった点を明確にしておくことが考えられます。
ただし、遺産分割協議段階でここまで詰めた協議をしているケースは少ないというのが実態ではないかとおもいますし、困難である場合もあります。
なお、ここで決めた内容はあくまで相続人間の取り決めにすぎず、税務署に対して連帯納付義務そのものを否定することはできません。この点も誤解が多いところです。
おわりに
相続税の連帯納付義務は、制度としてはシンプルですが、実際の相続の場面では思わぬ負担を生むことがあります。
- 税務署との関係では連帯責任
- 相続人間では最終的に精算
この二層構造を押さえておくことが重要です。
相続税が発生する可能性がある場合には、遺産分割や納税資金の手当てを含め、早い段階で全体像を確認しておくことが、結果的にトラブルの予防につながります。
遺産分割、相続に関するご相談は、弁護士法人長野第一法律事務所までどうぞ。すでに発生した相続についてのご相談は、初回無料となります。