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税理士に任せていたのにペナルティ?―過少申告加算税と重加算税の違いと実務対応―
税務調査の現場でよくある疑問として
「税理士に任せていたのに、なぜペナルティがかかるのか?」
「過少申告加算税は仕方ないとしても重加算税もとられるの?」
という疑問です。
この点を理解するには、過少申告加算税と重加算税の違いを押さえることが不可欠です。
特に、最高裁平成18年4月20日判決、最高裁平成18年4月25日判決は、その分岐点を示した重要判例です。
1 まず結論:2つは全く別物
結論を先に整理すると、次のとおりです。
- 過少申告加算税
→ 税理士に任せていても原則として免れない - 重加算税
→ 税理士に任せていたことが「正当な理由」になる場合がある
一見矛盾するようですが、これは制度の性質の違いによるものです。
2 過少申告加算税:「正当の理由」は非常に限定的
● 制度の性質
過少申告加算税は、
申告が結果として誤っていたこと自体に対するペナルティです。
そのため、原則として広く課されます。
● 最高裁の判断(平成18年判決)
最高裁平成18年4月20日判決は、納税者が依頼した税理士が、納税者と相談することなく客観的には明らかに不正な税務申告を行った事案です。
最高裁は、過少申告加算税の制度趣旨に触れて、
- 税理士に依頼していた
- 専門家の判断に従った
という事情があっても、
それだけでは「正当の理由」にはならないとの判断をしています(納税者が申告内容を確認していなかった、申告書の控えなども要求していなかったなど)。
● 実務上の帰結
よくある主張は通りません。
- 「税理士がやった」
- 「専門的を信頼していた」
→ いずれも原則NG
過少申告加算税について「正当の理由」が認められるのは、かなり限定的な場合に限られるといえるでしょう。
3 重加算税:「仮装・隠蔽」が核心
一方で、重加算税は、過少申告加算税とは趣旨が異なりますので扱いが異なります。
この点について判断した重要な判例である最高裁平成18年4月25日判決は、納税者が国税庁出身の税理士に丸投げのような形で依頼した事案で、なんと当該税理士が税務署職員に賄賂をわたして「0円」との確定申告を黙認してもらったというにわかに信じがたい事案でした。
最高裁は、本件では重加算税賦課の要件を充足しないと判断しました。
納税者が税理士に申告を委任した場合には,「納税者において,当該税理士が隠ぺい仮装行為を行うこと若しくは行ったことを認識し,又は容易に認識することができ,法定申告期限までにその是正や過少申告防止の措置を講ずることができたにもかかわらず,納税者においてこれを防止せずに隠ぺい仮装行為が行われ,それに基づいて過少申告がされたときには,当該隠ぺい仮装行為を納税者本人の行為と同視でき,重加算税を賦課することができる」と判断し,税理士の選任又は監督につき納税者に何らかの落ち度があるというだけでは足りないとしたものです。
その上でXについては,不正行為の認識も疑いもなく税理士に委任しており,その後の不正行為を認識していた事実も認められないものとして,これまで同様に重加算税賦課要件が認められないものと判断しました。
4 ポイント
企業・個人いずれにとっても重要なのは、
- 税理士に丸投げしない
- 重要論点は税理士と共有・確認する
- 資料開示の記録を残す
という基本動作です。
税務リスクは、申告時ではなく「調査時」に顕在化するものです。
そのときに効いてくるのが、日頃の関与の仕方だといえるでしょう。
弁護士法人長野第一法律事務所では、税務についても、協力税理士と連携してご相談に対応しています。
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