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育児・介護休業法の改正~より両立しやすい社会へ~
来年(2025年)4月1日から順次施行予定の改正育児・介護休業法(正式名称:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)について説明いたします。
育児・介護休業法は、持続可能な社会を実現する上で重要な「仕事」と「育児・介護」の両立を図るための大切な法律です。
1 そもそも育児・介護休業法とは?
「育児(介護)で働けないなら、仕事を辞めてください」・・・このような話が、当然のこととして受け入れられていた時代もありました。また、「育児や介護で休むなんて周りの人に迷惑だ」という考えもありました。
しかし、そのような考えだと、
・仕事をしている限り、育児はできない⇒少子化加速!
・育児や介護をする人は退職する⇒労働力低下!
・労働できない人が増加⇒社会保障費増大!
など、どう考えても社会は悪い方向へ進んでいきます。
このような社会の悪化・衰退を防ぎ、むしろ経済や社会の発展に資する仕事と育児・介護の両立を実現するために育児・介護休業法が定められました。
そして、同法により、育児休業・介護休業・子の看護休暇・介護休暇・所定外労働の制限・・・などの育児・介護と仕事の両立を図る制度が定められることになりました。
2 改正のポイント1~子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充~
① 柔軟な働き方を実現させるための措置を講じること及び周知・意向確認の義務化
従前3歳以上、小学校就学前の子を養育する労働者に対し、柔軟な働き方を用意することは、事業主の努力義務でした。
しかし、本改正で、事業主は、上記労働者に対し、以下の中から2つ以上の制度を選択し、措置を講じる法的義務が生じるようになりました。
・始業時間等の変更(フレックスタイム制・時差出勤・保育施設の設置等)
・在宅勤務(テレワーク)等の措置
・育児のための所定労働時間の短縮措置
・新たな休暇制度の付与措置
・その他省令で定める措置
また、これらの措置を講じるだけでなく、講じた措置の周知や意向確認も事業主の法的義務になります。
- 施行日は、令和6年5月31日から1年6ヶ月以内の政令で定める日です。
② 所定外労働の制限の対象が拡大
所定外労働とは、要するに残業です。この制限の対象の拡大とは、残業免除の対象の拡大を指します。
従前は、3歳未満の子を養育する労働者が対象でしたが、改正により、小学校就学前の子がいる場合は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、残業をさせることができなくなりました。
- 施行日は、令和7年4月1日です。
③ テレワーク導入の努力義務化
3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できる措置を講じることが事業主の努力義務となりました。
- 施行日は、令和7年4月1日です。
④ 子の看護休暇の対象拡大
従前は、小学校就学前の子が負傷・疾病等の療養の必要性等がある場合のみ看護休暇を取得することができました。これが改正により、小学校3年生修了前の子に対し、療養だけでなく、感染症を伴う学級閉鎖や入学式(入園式)や卒園式を理由とする場合にも取得可能になりました。
また、6ヶ月未満の雇用期間の労働者でも制度適用の除外をできないようになりました(従前は労使協定で除外できました。)。
- 施行日は、令和7年4月1日です。
⑤ 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取や配慮の法的義務化
従前は、労働者又はその配偶者が妊娠・出産等した場合、育児休業制度の周知が義務付けられていました。今回の改正では、同周知だけでなく、仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が義務付けられることになりました。
- 施行日は、令和6年5月31日から1年6ヶ月以内の政令で定める日です。
3 改正のポイント2~育児休業の取得状況の公表義務の拡大~
従前は、従業員が1000人を超える企業のみに義務付けられていた育児休業等の取得状況公表を、300人超の企業にも義務付けられるようになりました。
- 施行日は、令和7年4月1日です。
4 改正のポイント3~介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化~
従前、介護に関しては、育児と異なり、介護休業制度等の周知・意向確認義務はありませんでしたが、本改正により、同義務が追加されました。また、仕事と介護の両立支援制度を介護に直面するより前の段階で情報提供すること、両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備などが法的義務化されました。さらに、テレワーク導入の努力義務や、雇用期間が6ヶ月未満の労働者でも介護休暇を取得できるようになりました(従前は労使協定で除外可能でした。)。
- 施行日は、令和7年4月1日です。
5 改正までに各企業が備えておくこと
上記のとおり、事業主には、本改正により多岐に渡る義務が生じます。
また、これらの義務に違反した場合、厚生労働大臣による報告、助言、指導、勧告の対象となることがあり、同勧告違反の場合、公表されるリスクがあります。
このため、上記施行日までに就業規則や社内様式の改訂、子の看護休暇及び介護休暇において「勤続6ヶ月未満の労働者」を除外していた労使協定を締結していた場合は、改正をふまえた労使協定の締結、上記育児休業の公表義務を負うようになった企業には、公表の準備を行う必要があります。
厚生労働省は、令和3年6月の改正の際、規定や様式の例を公表していましたので、企業の法務担当者は同省の発表を注視していきましょう!
長野第一法律事務所では、様々な企業法務に関する相談を受け付けています。
是非長野第一法律事務所にご相談ください。(和手)