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木谷明「刑事裁判の心」「無罪を見抜く」
木谷明さんが昨年11月にお亡くなりになりました。
刑事裁判官として、大変優れた業績を残した名裁判官で、この業界では知らない人はいないという方でした。
木谷さんは、最高裁の調査官を経て、浦和地裁の裁判長、東京高裁の部総括判事など要職を歴任され、日本の刑事裁判に大きな足跡を残しました。
別件逮捕の違法性判断に関する別件基準説という理論を打ち出し、その枠組みはその後の下級審裁判例に大きな影響を与えています。
木谷さんは、裁判官の心構えとして、「被告人の言い分を、先入観を持たずに虚心坦懐に聞く」、「自分が本心から納得するまで証拠調べをする」を実践し、多くの無罪判決をだし、検察官もほとんど控訴できない説得力ある数々の判決を生み出したのでした。
その木谷明さんが、自分の足跡を振り返り、刑事裁判のあり方について語ったのが「刑事裁判の心」「無罪を見抜く」の2冊です。
司法修習生にはぜひ読んでほしい必読の書籍で、わたしもこのお正月休みに改めて読んでみて、身の引き締まる思いに打たれました。
ちなみに、木谷さんのお母様は、長野県の地獄谷温泉の旅館の娘さんで、長野県にご縁のある方でもあります。
弱い立場の人への温かい眼差しと、事件に真摯に向き合う木谷先生の姿勢は、我々後進にかけがえのない財産を残しました。
改めて、木谷先生の御冥福をお祈りしたいと思います。