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ビジネスと人権~企業に求められる役割~
今回は、いつもの連続投稿とは別に、「ビジネスと人権」について説明します。
とは言え、抽象論や理念を説明しても睡眠導入剤にしかなりませんので、具体的に企業に求められていることに絞って説明します。
可能な限り眠くならないように作りましたので、最後まで読んでいただけると幸いです!
1 企業が人権に関して考える必要性
「そもそも企業と人権って関係あるの?」という疑問があるかと思います。
このような考えはもっともで、そもそも人権(自由・生命・平等・幸福追求など)を伝統的に侵害してきたのは、国家でした。
しかし、グローバル化した今日では、もはや国家に縛られない企業も現出し、社会における役割や重要性も向上しました。このような中で、企業が人権を害することも増え、問題となるようになりました。
- 企業の人権侵害の例
・奴隷的に従業員を搾取する
・サイバーや医療の分野で個人情報を侵害する(勝手にクローンを作られるなど)
・企業活動の汚染により生活環境を害する(温暖化だけじゃないよ!公害もあるよ!)
・・・といった感じで、強くなりすぎた企業は人権を害することもあるのです。
2 企業がすべきことについて
(1)人権デュー・ディリジェンスの実施
企業がすべきこと、それは、「人権デュー・ディリジェンス」を実施する ことです・・・何でしょうこの意識高い系の用語は。
☆「デュー・ディリジェンス」は、企業のM&A(合併及び買収)の際によく使われる用語なので、変な用語ではありません。
これは、要するに、人権への悪影響を特定し、予防し、軽減し、対処方法を説明するために、①現実・潜在的な人権への影響を評価し、②調査結果の統合と対処を行い、③対応の追跡調査を行い、④対処方法を周知することを意味します。
ここまででは抽象的で眠気を誘うので、ここからは具体的な項目に分けて説明します。
(2)「①現実・潜在的な人権への影響を評価」について
まずは、自分の企業の活動や取引先の状況、その取引先の状況などを確認して、何らかの人権侵害につながっていないか確認します。
- 工場が汚染物質を出している。安いと思った輸入元が児童強制労働を行っている・・・など。
次に、その人権侵害について、企業としての対処への優先順位を立てましょう。企業のリソースは無限ではありませんから。
優先順位の決定の際は、発生する可能性の高低よりも結果の深刻性を重視しましょう(発生可能性が高いが財産上のリスクしか生じないものと可能性は低いが人が亡くなる可能性があるときは、後者の方を優先すべきです。)。
評価したら、次の項目に行きましょう!
(3)「②調査結果の統合と対処を行い」について
調査して評価しただけで終わったら調査分だけ時間と労力の無駄になっていまいます。
そこで、人権への悪影響として優先的に対処する課題に対しては、対処していきましょう。
例えば、自社に問題がある場合は、直ちに問題となる事情を止めること、難しい場合は、法律顧問等に相談することが考えられます。
他方で、取引先に問題がある場合、取引先への影響力が強ければ是正を求め、取引先への影響力が低い場合は、取引先を変えると言った方法をとるこ
とも手です。また、情報収集能力や対処能力に限界がある場合は、外部の機関を使って解決を試みることも手段の一つとなります。
重要なことは、現場任せにせず、経営陣がしっかりと方針を定め、研修等で従業員まで徹底することです。
(4)「③対応の追跡調査を行い」について
対処したまま放置してれば、効果が得られるか不明ですし、再発防止もできません。
このため、何らかの対応を行った場合は、しっかり追跡調査を行いましょう!
追跡調査については、方針が散らからないよう、指標や是正計画を定めたのち、社内または第三者機関を通じて定期的に監査を行うことが望ましいです。
対応について調査したら組織内にフィードバックをしましょう。しなければ再発防止の役に立ちませんからね。
(5)「④対処方法を周知する」について
必要があれば、企業が主導する方法で外部へ公表しましょう。個人が情報端末を保有しておりいつでもリーク可能な現代社会では、隠しておいて後日発覚するよりも対処を講じた上で正式に公表した方が企業への悪影響が低くなる場合もあります。
取引上の秘密等の法的リスクを顧問等の専門家と相談しながら、適切なタイミングでの公表が重要になります。
3 以上が企業による人権侵害への対象方法の一例になります。人権への配慮は、リベラル層へのご機嫌伺いという捻くれた理由だけでなく、それ以上に、企業にとどめを刺すような深刻な不祥事を防ぎ、もって従業員や経営者自身やその家族を守ることにもつながります。
長野第一法律事務所では、企業における人権侵害やそれに対する対応についても、ご相談に対応しています。
是非長野第一法律事務所にご相談ください。