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農地課税・宅地課税・宅地並み課税、そして「生産緑地制度」

土地にかかる税金は、その土地の「使い方」や「都市計画上の位置づけ」で大きく変わります。代表的なのが「農地課税」「宅地課税」「宅地並み課税」。ここに「生産緑地制度」も加えると、より立体的に理解できます。


1 農地課税

農地は食料生産を担う基盤であり、政策的に保護されています。
固定資産税は収益還元方式で算出され、実勢価格より低い評価額となるのが一般的です。これにより課税標準が抑えられ、宅地に比べて大幅に軽い税負担で済みます。


2 宅地課税

宅地は居住・商業・工業など幅広い利用が想定され、評価は取引事例比較方式で実勢価格に近づけられます。
そのため同じ面積でも農地と比べて評価額は大きく上昇し、固定資産税も高額になります。


3 宅地並み課税(特定市街化区域農地課税)

市街化区域内の農地には「宅地並み課税」が導入されています。
都市計画上は住宅や商業地としての利用が想定されているにもかかわらず、従来の農地課税のままでは「税の不公平」が生じるためです。

ただし、いきなり宅地課税と同額にすると農家が耕作を続けられなくなる恐れがあるため、一定の調整措置が組み込まれています。


4 生産緑地制度とは

そこで重要になるのが「生産緑地制度」です。
これは、都市計画法に基づき「市街化区域内の農地」であっても、

  • 面積が500㎡以上

  • 公害防止、災害防止、景観維持など公益的機能を有する

  • 将来も農業継続の意思がある

といった条件を満たすと「生産緑地」として指定できる制度です。

生産緑地に指定されれば、引き続き農地課税の扱いとなり、固定資産税は大きく軽減されます。加えて相続税についても「納税猶予制度」が利用でき、後継者が農業を継続する限り課税が猶予されます。


5 生産緑地と「2022年問題」

実務上有名なのが「2022年問題」です。
生産緑地には原則30年間の営農義務があり、1992年の制度開始時に指定された土地の多くが2022年に解除期限を迎えました。
解除されると農地課税の特例が失われ、宅地並み課税や宅地課税が適用されることになります。結果として、

  • 相続税や固定資産税の急増

  • 大量の農地が市場に出て都市部での土地供給が急増する可能性

などが懸念されてきました。

実際には、市町村による「特定生産緑地」への再指定などの制度調整もあり、一斉に宅地化したわけではありませんが、今後も都市農地の行方を左右する重要な課題です。


6 まとめ

  • 農地課税:農業継続を前提に低額評価

  • 宅地課税:実勢価格に近い評価、税負担大

  • 宅地並み課税:市街化区域農地に適用、宅地に近いが緩和措置あり

  • 生産緑地:公益性と営農継続を条件に農地課税を維持

これらの制度は単なる税制の違いにとどまらず、都市計画・農業政策・相続対策と密接に関わっています。
「土地にどんな課税がされているのか」を知ることは、自らの資産を守り、地域社会の未来を考えることにもつながるのです。

相続事件の処理などで、農地の評価をどう考えるかが問題となることもあります。

農地、相続、遺産分割事件のご相談は、長野第一法律事務所にご相談ください。遺産分割のご相談は、初回無料です。

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