高齢化の進展に伴い、介護現場におけるケアマネジャー(介護支援専門員)の役割はますます重要になっています。
他方で、事故やトラブルが発生した場合、「ケアマネの責任はどこまで及ぶのか」というご相談も増えています。
本記事では、介護保険法を踏まえ、施設ケアマネと居宅ケアマネの違い、そして法的責任のポイントについて、法律事務所の視点から解説します。
1 ケアマネジャーの法的位置づけ
ケアマネジャーは、利用者の心身状況や生活環境を踏まえてケアプラン(介護サービス計画)を作成し、必要なサービス調整を行う専門職です。
根拠法令は介護保険法であり、
要介護認定を受けた利用者の支援
サービス担当者会議の開催
モニタリングの実施
サービス事業者との連絡調整
などが法定業務とされています。正式には「居宅介護支援専門員」といいます。ケアマネの資格は、国家資格ではなく、都道府県知事が管理する任用資格です。
ケアマネというと「介護の要」というイメージがあり、なんでも対応できる万能選手のようなイメージを有している人もいます。
もっとも、ケアマネは「医療行為の判断者」でも「直接介護の実施者」でもありません。
この点を誤解すると、責任範囲を過大に評価してしまうおそれがあります。
現実に、ケアマネの負担(特に居宅ケアマネ)が大きくなりすぎ、疲弊しているケアマネが増えているとの指摘もあります。
ケアマネには、大別して
1 居宅ケアマネ
2 施設ケアマネ
があります。1については、さらに「独立型」と「サービス併設型」の2つがあります。
なお独立型ケアマネは少なく、居宅ケアマネのほとんどはサービス併設型だといわれています。
2 居宅ケアマネの法的責任
(1)所属と契約関係
居宅ケアマネは、通常「居宅介護支援事業所」に所属し、利用者と居宅介護支援契約を締結します。
法的には、
事業所が契約主体
ケアマネは事業所の履行補助者
という位置づけになります。
(2)問題となりやすい事例
居宅ケアマネに関して多いトラブルは次のようなものです。
転倒リスクの高い利用者へのサービス調整不足
医療連携の不十分さ
モニタリング未実施
記録不備
例えば、転倒歴がある利用者について、適切な福祉用具導入や訪問回数の調整を検討しなかった場合、「注意義務違反」が問題となることがあります。
もっとも、裁判例上、
ケアマネは結果を保証する立場ではなく、合理的判断を尽くしたかが問われる
と整理される傾向にあります。
3 施設ケアマネの法的責任
(1)施設ケアマネの特徴
特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの施設内に配置されるケアマネを「施設ケアマネ」と呼びます。
ここで問題になるのは、ケアマネ業務と施設職員としての業務が重なりやすい点です。
(2)責任の重なり
施設内事故(転倒・誤嚥・徘徊事故など)が起きた場合、
ケアプラン作成上の問題か
介護現場での見守り義務違反か
施設の安全配慮義務違反か
が争点になります。
施設ケアマネは同一法人の職員であることが多いため、法人の組織的責任が問われやすいのが特徴です。
4 施設と居宅の違いまとめ
| 観点 | 居宅ケアマネ | 施設ケアマネ |
|---|---|---|
| 契約主体 | 居宅介護支援事業所 | 施設 |
| 主な役割 | サービス調整 | 施設内ケア計画 |
| 責任構造 | 事業所責任中心 | 施設の安全配慮義務と一体 |
| 事故との距離 | 間接的 | 直接的 |
施設のほうが、事故との物理的・組織的距離が近いため、訴訟上は責任が重く評価される傾向があります。
5 ケアマネ業務で特に重要な3つのポイント
① アセスメントの具体性
「転倒リスクあり」だけでは不十分です。
いつ
どこで
どの動作で
どの程度の頻度で
といった具体的記録が重要です。
② サービス担当者会議の実質化
形式的な開催ではなく、
医療との連携記録
家族への説明
リスク共有の有無
を明確に残すことが、後の紛争予防になります。
③ モニタリングの継続性
状態変化を見逃さないことが重要です。
特に、
退院直後
転倒直後
体調急変後
は重点的な確認が求められます。
6 「結果」ではなく「過程」が問われる
介護事故の法的判断では、最終的な事故結果よりも、
予見可能性があったか
回避措置を検討したか
記録に残っているか
という「過程」が重視されます。
つまり、適切に検討し、共有し、記録していれば、責任を否定できる可能性は十分にあります。
7 施設・事業所としてのリスク管理
法律実務上、重要なのは「個人責任の追及」よりも、
記録様式の統一
リスク事例の内部共有
法改正への継続対応
顧問弁護士との連携
といった組織的対応です。
ケアマネ個人に責任を集中させる体制は、結果的に組織リスクを高めます。
まとめ
ケアマネジャーの責任は無制限ではありません。
しかし、
アセスメント
情報共有
記録
の3点を怠ると、法的責任を問われる可能性が高まります。
施設ケアマネと居宅ケアマネでは、責任構造が異なります。
それぞれの立場に応じたリスク管理体制の構築が、紛争予防の鍵となります。
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