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子どもに関する近時のトピック② 共同親権

 現行法において、夫婦が離婚した後、子どもの親権は父又は母のいずれかに決める必要があります。

 この単独親権の現行法に関し、現在、「離婚後も父母が共同で親権を行使できる」とする共同親権を認めるという法改正案が法制審議会から出されています。

 今回は、この共同親権に関し、そもそもどのようなものか解説します。

☆ 現在共同親権制度はありません。あくまでも現在検討されている改正案になります。

 

1 親権とは?

  実は、そもそも“親権”自体に具体的な定義はありません。

 一般的には、子どもの利益のために、監護・教育を行ったり、子の財産を管理したりする権限かつ「義務」であると言われます。これは、民法820条が親権者の権利義務として、「子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」と定めていること、また、民法824条が親権者の行うこととして、「子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する」と定めていることから導かれます。

※ 他に子どもの住む場所の指定(民法821条)、子どもの懲戒(民法822条)、子どもの職業の許可(民婦823条)も親権の内容に含まれると解されています。

 

 そのため、親権とは、子の財産等を管理・代表する単なる権利ではなく、子の利益を確保するための親の“義務”であるという側面を有します。

 また、親権は、主に子どもの進学や医療を決定する際に行使されますが、親権者とは別に監護権者を定めれば、監護権者がこれらを決定することができます。

 なお、「親権」という言葉は、親が子どもを支配できるという印象を与えること、権利の面のみ強調され、義務の面が考慮されないこともあることから、「親の義務」や「親の責任」に改めるべきという意見も出されています。

 

2 なぜ現行法は離婚後の親権に関して単独親権を定めているのか

  まず、夫婦が離婚していない場合、親権は共同で行使するものです。

 しかし、離婚した場合、親権の共同行使は望めず、子どもにとって不都合が生じます。

  そのため、現行法は、離婚後の親権に関して単独親権を定めています。

 

3 離婚後の共同親権を認める必要性とは?

 上記のとおり現行法は単独親権を定めていますが、法制審議会では、①離婚後も夫婦が共同して子どもに対して責任を負うべきこと、②国際的にも共同親権を認める傾向にあることを理由に共同親権を候補にできるような案を出しています。

 また、実務的にも、離婚調停や離婚裁判における親権争いによる長期化を避けられるというメリットが言われています。

 共同親権制度が導入されても、単独親権にすることは可能であり、共同行使が出来ない場合は別制度で子どもの利益を確保できるよう定めています。

 ☆ 海外で共同親権となる場合は、子どもが定期的に双方の家庭を移動して、生活をすることが多いです。

 

4 共同親権の問題点

  上述したとおり、多様性を認め、紛争の早期解決につながるとも考えられる共同親権ですが、問題も少なくありません。

 問題の1点目としては、DVや虐待事案において子どもへのリスクが大きいことです。DV親や虐待親が共同親権者になれば、被害者はDVや虐待から解放されず、子どもの生命への危険性が生じます。

 現在DV等については必ずしも認められがたいこと、そのような相手方と早く別れたくて共同親権を認めてしまう恐れがあることからすると、この問題は大きなものといえます。

 問題点の2点目としては、改正の実益が低いことです。

 そもそも離婚後に両親が子どもの監護状態を把握し、適切な親権行使を共同で行うことが難しいと思われます。また、上述した調停や訴訟の早期解決も、親権行使に関する紛争を先送りにしているだけとも言えます。

 

5 以上のとおり、共同親権にはメリットもありますが、問題点も少なくありません。

 上述したとおり、現在「共同親権」という制度はありませんが、現在法制審議会で議論が進められており、将来的に導入される可能性が高いと思われます。

 現在親権を争っている方や、離婚を考えている方の中には、今後共同親権を得たい方もいると思います。

 しかし、一番大切なことは子どもの利益(幸せ)です。

 肩書きなどにとらわれず、子どもの最善の利益を確保するにはどうしたら良いか考えてみましょう。

 

 長野第一法律事務所では、夫婦関係のトラブル、親子関係のトラブルに関し、相談を受け付けています。

 離婚、子どもの養育や親権に関してお悩みの方は、所属弁護士が親身にご相談に対応しますので、お困りの方は、是非長野第一法律事務所にご相談ください。(和手)

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