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会社に関する疑問②~監査役の義務と責任~

 時折、会社を始めようとする人や経営している人から「監査役をやってみない?」とか「名前だけで良いから監査役になってよ」という話があるということを耳にします。

 果たして監査役は、単なる名義貸しで良いのでしょうか?

 今回は、会社を設立しようと思っている人、経営している人、監査役の話を持ちかけられた人向けに、監査役の義務と責任について説明します。

 

1 監査役・監査役会とは?

  「監査役」とは、取締役(設置されている場合は会計参与も)の職務の執行を監査する機関です。「監査役会」は、これらの監査役で構成され、組織された

会議体です(3人以上の監査役、かつ半数以上は社外監査役である必要があります。)。

 「監査」とは、職務執行が適正に行われているか調査し、必要な場合は是正を行うことを指します。

 原則として監査の範囲は、全職務執行に関するものですが、定款で制限された場合は、会計に関する事項に制限されることもあります。

※ 会計参与・・・取締役と協力して計算書類を作る機関です。

 

2 どのような会社に必要?

  委員会設置会社以外の取締役会設置会社及び会計監査人設置会社は、監査役が必要です。

  また、委員会設置会社以外の公開大会社は監査役会の設置が必要です。

・・・? わかりづらいと思うのでまとめると

① 資本金5億円以上または負債200億円以上の会社(大会社)

  委員会設置会社にしない限り、監査役が必須です。また、発行株式の全てに譲渡制限を付けていない会社(公開会社、一部譲渡制限があっても可)の

場合は、監査役会の設置も必要です。

 

② 資本金5億円未満または負債200億円未満の会社

 ア 公開会社の場合

   監査役が必須です。監査役会の設置は任意です。

 イ 発行する全ての株式に譲渡制限を付けている場合(非公開会社)取締役会を設置する場合及び会計監査人を設置する場合は、原則監査役が必要です。

   ただし、会計参与を置いた場合で会計監査人を置かない場合は、任意となります。

 

3 監査役の職務権限・義務

  監査役の性質、設置義務は以上のとおりです。それでは、設置された監査役は、どのような行為を行い、そのためにどのような権限を有し、義務を負うの

でしょうか?

 会社法は、善良な管理者の注意を持って、その職務を行うことを義務付けています。

 以下では、会計監査に限定されていない監査役に関して、その職務権限と義務として代表的なものを説明します。

 ① 調査権限

   上述したとおり、監査役は、職務執行の適正を調査するために設置される機関です。

   そのため、監査役には、いつでも、取締役、会計参与もしくは使用人に対し、事業の報告を求め、会社の業務及び財産の状況を調査すること

ができます。また、必要があれば、子会社に対しても調査することが可能です。

 ② 報告義務

   監査役は、取締役の不正行為やそのおそれのある行為又は、法令・定款違反行為もしくは、著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく取締役又は取締役会に報告する義務があります。

 ③ 取締役会へ出席する権限及び義務

   監査役は、必要があれば取締役会を招集する権限を有し、また、取締役会に出席し、必要があれば意見を述べる権限・義務を有します。

 ④ 株主総会の議案等の調査・報告義務

   監査役は、株主総会に提案された議案について、法令・定款違反が無いか調査し、株主総会に報告する義務を有します。

 ⑤ 違法行為等差止請求権

   監査役は、取締役の法令・定款違反行為、又はそのおそれのある行為について、取締役に対し、止めるよう請求することができます。

 ⑥ 会社の代表として訴訟をする権限

   監査役は、取締役と会社との訴訟において、会社を代表することができます。また、会社が取締役を訴えるか否かを合理的な点で判断し、決定する義務を負います。

 ⑦ 会社の組織に関する訴えの提起権

   監査役は、会社の組織に関する訴え(合併等の無効を求める訴えなど)に関し、訴訟を提起する権限を有します。

 ⑧ 監査報告の義務

   監査役は、事業年度毎に監査報告書を作成する義務を負います。

 。

 代表的な監査役の職務権限・義務としては、以上のようなものがあります。

 

4 監査役の責任

  監査役は、上記の権限を付与され、義務を負っている関係上、その職務を怠れば、責任を負うことになります。

 具体的には、取締役会において法令違反等の決定を黙認した場合、代表取締役が違法行為を繰り返しているときに、これを防止するための内部統制シス

テムの整備や代表取締役の解職を取締役会に意見しなかった場合などは、監査役が任務を怠ったとして責任を負うことになります。

 

5 以上のように、監査役はただのお飾りでは務まらず、名義を貸しているだけでは、いざその会社に不正が発覚した場合に損害賠償を請求される立場にな

ることもあります。そのため、安易に名義を貸すなどして就任しないよう気を付ける必要があります。

 

 長野第一法律事務所では、会社の経営者である取締役の方や、監査役、その他諸機関の方、設立を考えている方からの相談を受け付けています。

 監査に関してお悩みの方、役員就任や組織作りにお悩みの方は、是非長野第一法律事務所にご相談ください。

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