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会社に関する疑問④~利益相反取引とその規制~

 取締役・・・会社の業務を執行する者としてある種の万能感を有する役職とも思えます。また、会社の意思決定に携われる非常に重要な役職です。

 このような万能で重要な立場にある取締役には、「会社を犠牲にして自己または第三者の利益を図ってはならない」という義務が課されています(会社法

330条、民法644条、会社法355条)。

 今回は、その義務の一例である利益相反取引とその規制に関して説明します。

 

1 利益相反取引とは?

  利益相反取引とは、①取締役が自己または第三者のために株式会社と取引しようとすること(以下「直接取引」といいます。)及び、②株式会社が取締役の債務を保証すること、その他取締役以外の者との間において、会社と当該取締役の利益が相反する取引をしようとすること(以下「間接取引」といいます。)を併せて、利益相反取引といいます。

 

 利益相反取引は、一律に禁止されているわけではなく、以下の場合には許容されています。

・取締役会設置会社の場合:取締役会の承認があった場合

・取締役会が設置されていない会社の場合:株主総会の承認があった場合

 (以下では、併せて、「法定の決議機関の承認」といいます。)

 これらの法定の決議機関の承認があれば、利益相反取引は有効なものとなりますが、承認が無い場合、①直接取引は無効、②間接取引は、事情を知っている第三者との間で無効になります。

 次からは、個々の取引ごとに具体例を交えて説明します。

 

2 ①直接取引の具体例

(1)典型的なケース

会社の備品を取締役が譲り受ける場合や、逆に取締役個人所有のものを会社が購入する場合が考えられます。

この場合は、取締役と取引した会社で法定の決議機関の承認が必要になります。

(2)複雑なケース

   A会社(代表者X)とB会社(代表者Y、取締役X)で取引した場合も、B会社にとっては、XがB会社で無くA会社の利益を確保するために取引

  していると見えるので、B会社の法定の決議機関の承認が必要です。

            他方、原則A会社の承認は、不要です。(A会社と取引しているのが、Yだからです。)。

            ただし、XがB会社の全株式を所有しているなどB会社とXを同視できる場合は、A会社の承認も必要となります。

 3 ②間接取引の具体例

  間接取引は、①に比べて複雑ですが、具体例を交えて説明します。

   典型的なケースは、取締役の債務(借金)に関して、会社に保証させる場合です。

 取締役と第三者(銀行等)の貸金契約と第三者と会社の保証契約は、別個の契約なので、①直接取引に当たりませんが、会社の利益と取締役の利益が相反することが多いので、規制の対象となります。

 この場合、保証をする会社の法定の決議機関の承認が必要になります。

 

4 その他の注意点

 ア 法定の決議機関の承認を受けても、会社に損害が生じた場合は、取締役に責任が生じることがあります。

 イ 一般的に会社に対する贈与など会社を害するおそれのない取引や、株主全員の同意を得た取引の場合は、利益相反取引の規制が及ばないとされています。

   ただし、取引の公正さや株主の同意があっても債権者を害するリスクもあることから、上記の場合であっても、法定の決議機関の承認を受ける方が安全です。

 

   長野第一法律事務所では、利益相反取引に該当するかの確認や承認の取り方、承認書類の残し方について、相談を受け付けています。

   会社と取締役間の取引に関してお悩みの方、コンプライアンスを重視した経営をご希望の方は、是非長野第一法律事務所にご相談ください。

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