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借入金のある相続~金銭債務の承継

1 債務も相続の対象

  相続は,プラスの財産もマイナスの財産も包括的に引きつぐ制度です。
  したがって,亡くなった人に借入金などの債務がある場合には,その債務も相続人が引き継ぐことになります。 
  「美味しいとこ取り」はできないということですね。

2 金銭債務は遺産分割の対象外

  では,その債務の引き継ぎは具体的にはどのようになるのでしょうか?
 (ここでは,借入金のような金銭債務を念頭に置きます。保証債務(保証人の地位)などについては別途検討が必要になります。)

  金銭債務のような可分債務については,相続開始時に,遺産分割を待たずに,法定相続分に応じて各相続人が債務を承継するというのが最高裁の判例で示されています(最判昭和34年6月19日)。
  これを債権者の側からみれば,以下のようになります。

  被相続人Aに,1000万円を貸していた。
  Aが亡くなり,相続人B,C,Dがいてそれぞれの法定相続分は2分の1,4分の1,4分の1である。
  債権者は,Bに500万円,Cに250万円,Dに250万円を,請求することができる。

 
  この例で,遺産分割協議において「1000万円の借入金債務はすべてBが引き継ぐ」と決めても,上記の結論には関係はないということです。
  すこし考えてみればわかりますが,債権者のタッチできない遺産分割協議で,債務を引き受ける人を自由に決められるということになれば,債権者の利益を害するからです。例えば,Bが無資力者であった場合を考えてみればわかりますよね。
 同様に,遺言で,債務の引き継ぎする人を指定したり相続分を法定相続分と異なる指定にしても,それは債権者との関係では主張できません。

 上記の点は,相続法の改正で明文化されています(民法902条の2本文)。

  但し,債権者が承認した場合には,その限りではありません(同条ただし書)。

3 共同相続人間での求償は可能

  上記の例で,債権者が,Cに250万円を請求して,やむを得ずCが250万円を支払ったとします。その場合,CはBに対しては,その250万円を返してくれという(求償)ことはできます。
  共同相続人間での内部的なことは遺産分割協議で決めれば,その相続人間では法的拘束力を有するからです。

 

 事業承継の場面では,保証債務(保証人の地位)の承継が大きな問題となりますが,これについては別途記事にしたいとおもいます。

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