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取締役の解任・職務執行停止

 先日の記事で、社長や専務は取締役(または代表取締役)であることをお話ししました。そして、取締役はその知見などに基づいて会社が適切に維持・発展していけるようにしていく義務があり、この義務を果たさない場合は会社に対して損害賠償の義務を負うこともご紹介しました。

 今回の記事では、取締役が暴走して会社の利益に反するような行動に出た場合や、そのような行動に出ようとしている場合に、株主としてどのような対応ができるのかを紹介します。

 

1 株主総会決議による解任

 取締役は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができます。

 したがって、取締役が暴走しているときは、株主総会を開いて当該取締役を解任する議案を提出し、その可決を目指すことになります。

 

2 解任の訴え

 株主総会に暴走する取締役を解任する議案を提出したものの、それが否決された場合は、裁判による解任を目指すことになります。

 具体的には、会社法854条に基づく役員の解任の訴えを提起します。同条では、「役員…の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき」には、一定の要件を満たす株主は、「当該株主総会の日から30日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求することができる」と定められています。

  取締役が不正行為や法令・定款に違反する行為をしたにもかかわらず、株主総会で解任決議ができなかったときは、同条により、裁判による解任を請求することになります。

 解任の訴えは、株主総会の日から30日以内という極めて短い間に提起する必要があり、この期間を超えてしまえば訴えは提起できません。そのため、迅速な対応が必要です。解任の訴えも見据えるのであれば、株主総会より前の時点から(できれば、取締役の暴走を知った直後に)弁護士に相談しておくことが望ましいです。

 なお、この訴えを提起できる株主については、会社法854条1項に定められていますが、やや細かい話になるため、本記事では説明を割愛します。

 

3 行為の差止めの訴え

 取締役が暴走行為をして会社に損害を与えれば、取締役がそれを賠償する責任を負いますが、取締役が十分な資産を持っていない場合などは損害が賠償されないこともあり得ます。そのため、取締役が暴走行為をしている、またはしそうになっているときは、それを止めさせることが必要です。

会社法360条では、取締役が「株式会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該株式会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる」とされています。そこで、取締役が暴走し、または暴走しそうなときは、同条に基づいてそのような行為を止めさせることになります。

 

4 職務執行停止の仮処分

 上記2、3で説明した方法で、取締役の暴走を止めることはできますが、これらは裁判手続きを経る必要があり、時間がかかります。

    しかし、会社は日々活動を継続していますので、取締役の暴走が続けば、会社に損害が発生し続けることになります。一刻も早く取締役の行為を止めなければなりません。

 そこで、取締役の職務執行停止の仮処分を申し立てることが考えられます。

 これは、文字通り、当該取締役の職務執行を一時的に停止させるものです。取締役がこの仮処分に反して職務執行をしても、それは無効になります。

 このように、職務執行停止の仮処分は大きな武器となります。

   しかし、その申立てが認められるには、高いハードルが設けられています。職務執行停止の仮処分の申立てを検討している場合は、ぜひ、長野第一法律事務所にご相談ください。(坂井田)

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