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農事調停制度
今回は,裁判所の農事調停をご紹介します。
1 裁判所の農事調停の根拠は,農地法ではなく民事調停法です。
民事調停法には,通常の事件以外のいくつかの事件類型について,事案の特色に応じた特則を設けています。
例えば,農事調停のほかには宅地建物調停,商事調停,公害調停,交通調停などがあります。
2 農事調停は,「農地又は農業経営に付随する土地,建物その他の農業用資産の貸借,その他の利用関係の紛争に関する事件」を扱うものです。農事調停は,普通の調停事件(簡易裁判所)と異なり,基本的には地方裁判所で行われるという点も特徴です。
3 農事調停には,裁判官1名と民間人(弁護士等の有識者等)2名以上から構成される調停委員会が調停を担当します。
農事調停の特徴として,小作官又は小作主事(都道府県の公務員)の意見を聴かなければならない(民事調停法28条)というルールが定められています。
これは,裁判官などは必ずしも当該地域の農業の実情に詳しいわけではないため,農地に関する紛争の解決にあたっては,当事者の合意があったとしても農地法の観点から見て適正な解決であるかどうか等について,専門家の意見を聴くべきとする趣旨であると考えられます。昔は,小作に関する紛争が多く,しかも深刻化しがちであったため,小作主事の意見を聴くということになっていますが,現代では小作に関する紛争以外についても農地法の趣旨にかなった解決を図るという意義があります。
4 調停期日に当事者が出頭し,事情を聴いたり提出資料を確認の上,解決を協議します。
もちろん,弁護士を代理人として選任し,同行することもできます。
協議で解決できるようであれば,合意内容を裁判所で「調停調書」として文書化します。
この調停調書は,裁判官が関与して作成されたものですから,判決と同一の効力を有するということになり,もし約束を違えた場合には,訴訟を経ることなく強制執行などの根拠となります。
この点は,前回の記事でご説明した農業委員会による和解の仲介制度と異なるところです。
5 協議で解決する見込みがない場合には,調停は不成立として終了となります。
この場合には,やむを得ませんので,訴訟という最後の紛争解決手段に移ることとなります。
農地についてのご相談も扱っています。