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遺産管理費用の清算と遺産分割

 遺産分割に、ある程度の時間がかかることがあります。
 特に、調停や審判手続になっている場合にはその管理費用の清算をめぐって問題となることは少なくありません。

1 遺産管理費用とは

  遺産管理費用の例としては、遺産中に不動産がある場合の公租公課(固定資産税等、マンションの管理費、建物の修繕費、火災保険料の支払いなど)、遺言執行者に対する報酬などがこれにあたります。
  対象の期間は、相続開始後から遺産分割までの間となります。


  民法では、このような遺産管理費用の負担について、独自の規定をしていません。

2 民法の共有規定の適用
  そこで、遺産分割までの共有(遺産共有といいます)も、共有の1つであることから、民法の共有に関する規定(253条1項)を適用し、共同相続人がその相続分に応じて負担すべきと考えられています。ここでいう「相続分」は、法定相続分を指します(大阪高決昭和58年6月20日など)。


3 遺産管理費用と遺産分割手続

  遺産管理費用の負担をどうするのかという問題は、遺産分割とは別個の問題とされており、当事者間に管理費用の清算を含めて合意が成立すればそれはそれでかまわないけれども、合意ができない場合には、遺産分割の審判で判断をしてもらうことはできません。

  共有物に関する管理の問題として、民事訴訟の問題(つまり家庭裁判所ではなく地方裁判所)として扱われることになります。

4 必ず認められるわけではない

  清算といっても、必ず法定相続分に応じた負担が認められるとは限りません。

  例えば、あるマンションに相続人の一人が相続開始後も実質的に無償で居住していて、その人がマンションの管理費や固定資産税を負担するのはある意味で当然ともいえます。このような場合には、清算を求めることは難しいでしょう。

  また、相続人の一人が、相続開始後も田畑を無償で使用して(耕作して)収益をあげている場合にも同様の問題がありえます。


  したがって、その遺産ごとの使用状況や負担の性質、金額等を勘案して、常識にかなった適正な解決を導く必要があります。


  このような遺産管理費用の清算についても、長野第一法律事務所まで御相談ください。

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