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食中毒と法的対応
ある日の営業時間中、お店の電話が鳴りました。
電話に出ると、昨日来店されたお客さんでしたが、声に元気がありません。「どうしましたか?」と尋ねたところ、今朝から下痢や嘔吐が続いており、食中毒かもしれない、とのこと。
こんなとき、どう対応すればよいのでしょうか。
1 動揺せずに事実を確認する
飲食店にとって食中毒の発生は死活問題です。そのため、食中毒という単語を聞いただけで動揺してしまうものと思われます。
しかし、影響を小さくしようと直ちに謝罪することは避けるべきです。口止めを頼むことなど事態の隠ぺいを図ることは最悪の手だと言わざるを得ません。
では、どのようにすべきか。
まずは、事実の確認です。可能であれば、お客さんに対して来店時間や注文した品などを聞き取ります。また、店側でも伝票の確認、使用した食材の確認、食材の保管状況の確認などを行うべきです。
対応が後手に回るほど問題は拡大しますので、初動からスピード感を大切にする必要があります。
2 営業は継続するのか
事実の確認をしたうえで、当日以降の営業を行うのか、判断する必要があります。
事実を確認した結果、食中毒の原因が店にありそうな場合、営業を中止することも検討する必要があります。保健所とも早期に連絡をとり、相談することも重要です。
3 顧客への対応
(1) 食中毒の申告があったお客さんに対しては、体調を気遣うとともに早期の受診を促すべきです。
この際、医療費を負担してもらえるのか、といった質問があるかもしれません。この時点では、本当に食中毒なのか、食中毒だとして店に原因があるのか、といったことが分からないため、医療費の負担やその他の賠償については回答を保留すべきです。
(2) 申告のないお客さんについても、どのように対応するのかも検討する必要があります。
事実確認の結果、店に原因がありそうな場合に、来店したすべてのお客さんに連絡するのか、食中毒の原因となった疑いのある食材を提供したお客さんのみに連絡するのか、といった判断を行う必要があります。そのうえで、お客さんに連絡を取り、状況を確認します。場合によっては、ホームページなどで発信することも検討すべきです。
4 保健所への対応
食中毒の疑いがあった場合でも、飲食店には保健所への通報義務はありません。もっとも、できるだけ早期に保健所に相談し、連絡を密に取るべきです。
仮に食中毒の原因が店側にあった場合、営業停止処分などの行政処分が課される可能性がありますが、飲食店側の対応状況が処分の有無や内容に影響を与えることもあります。
5 対応にあたって重視すべきこと
被害の拡大防止を図ることを最優先に考えるとともに、顧客・保健所・(場合によっては)マスコミへ真摯な対応をすることが重要です。
事態の隠ぺいを図って被害拡大を招き、取り返しのつかないほどに信用が失墜してしまった事例や真摯な対応を欠いたことで炎上を招いてしまった事例などはみなさんもニュースなどで見聞きしたことがあると思います。
いざ自分が当事者となると冷静な判断ができなくなるかもしれません。
判断に困ったときはぜひ長野第一法律事務所へご相談ください。
われわれ弁護士は冷静に客観的な立場から事態を把握しつつ、皆さんの味方として協力いたします。