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企業の基本理念としての価値観と企業目的

あなたの勤務先(あるいは所属している企業、団体)には、基本理念が存在しているでしょうか?

「ビジョナリー・カンパニーへの道」と題する論文を著したJ・コリンズとJ・ポラスは、「基本理念」について以下のように述べています。

 

1 繁栄を続ける企業には、確固たる基本理念や企業目的が必ずある。

2 基本理念とは、その企業の「決して変えてはならないもの」であり、時と場合に応じて変更すべき戦略や事業手法とはまったく異なる

3 基本理念は「価値観」と「企業目的」にわけられる

  「価値観」とは、組織を導く原則や信条であり、「企業目的」とは組織の根本的な存在理由である

4 価値観は、すべての企業で同じであるはずがなく、またその数は多くても3~5程度である

5 価値観は「状況が変わってその価値観が足かせになったとしても、守り続けるべきと心底思えるもの」である

  「明日の朝目が覚めて、一生困らないだけの資産を手にしていても、やはりこの価値観に寄り添って生きていくだろうか」と自問してみるべきだ

6 企業目的はその組織の存在する理由を表すものであり、例えばディズニー社の存在理由は「アニメを創作する」ではなく「人々の心に温もりを届ける」である。

  「株主価値の最大化」は事業上の目標であって、ここでいう「企業目的」ではない。

7 基本理念は、必ずしも言語化されていなくてもよい

8 基本理念は「創造する」のではなく「発見する」ものである 美辞麗句をひねり出す作業ではない

 

 上記論文では、ソニーの創業者である井深大氏の語ったソニーの基本理念(価値観、企業目的)が紹介されています。

 大変感銘を受けたので、ご紹介しておきたいとおもいます。

「技術上の困難はむしろこれを歓迎、量の多少に関せず最も社会的に利用度の高い高級技術製品を対象とす。」

「一切の秩序を実力本位、人格主義の上に置き、個人の技能を最大限に発揮せしむ」

 

 わたしが、とりわけ「なるほどなー」と思ったのは、上記の8です。

 つまり、基本理念がまずあってそれにしたがって事業を行うのではなく、実際にある事業を営んでいくうちにおのずとその企業の中で育っていく根本的な価値観や理念というものを「発見」するという部分です。

 その意味では、「基本理念」は、これからスタートアップする企業よりも、無我夢中で走ってきた企業が、自分というものを再定義する際にむしろ重要になってくる考え方なのではないかとおもいます。

   同論文で紹介されている、各企業の「企業目的」はこんなふうになっています。

 3M:創意工夫によって未解決の課題を解決する。

 HP:人類の発展と幸福のために技術面で貢献する。

 メルク:人々の生命を維持し、生活を豊かにする。

 ナイキ:戦って勝利する醍醐味を味わう。

 ディズニー:人々の心に温もりを届ける。

 

 また、「基本理念」の考え方は、企業だけでなく国家にも該当するとおもいます。

 国家の場合には、憲法がそれに該当するといえます。アメリカならアメリカ合衆国憲法、日本なら日本国憲法です。

 アメリカ、日本、ドイツの憲法から、それぞれの「基本理念」のコアとわたしが考えているものをご紹介しておきたいとおもいます。

☆アメリカ合衆国憲法

 われら合衆国の国民は、より完全な連邦を形成し、正義を樹立し、国内の平穏を保障し、共同の防衛に 備え、一般の福祉を増進し、われらとわれらの子孫のために自由の恵沢を確保する目的をもって、ここに アメリカ合衆国のためにこの憲法を制定し、確定する。

 

☆日本国憲法

第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

 

☆ドイツ連邦共和国基本法

第1条

(1) 人間の尊厳は不可侵である。これを尊重し、および保護することは、すべての国家権力の義務である。

(2) ドイツ国民は、それゆえに、侵すことのできない、かつ譲り渡すことのできない人権を、世界のあらゆる人間社会、平和および正義の基礎として認める。

(3) 以下の基本権は、直接に妥当する法として、立法、執行権および司法を拘束する。

 

 

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