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銭湯・サウナ・温泉施設における迷惑行為と法的措置

 大変興味深いニュースに接しました。集英社オンラインの記事です(記事は以下のリンクからどうぞ)

「ムスコは元気か?」サウナ室内で“不適切行為”が横行し、鹿児島の人気ヘルスセンターが閉店「夫婦で来店したのに夫が男湯でこっそり…」「厳しく注意喚起の張り紙をしたらクレームが殺到」

 要するに、公衆浴場内で男性同士が性的行為を行ったり、あるいは入浴客に性的行為を勧誘するような言動をすることについて、施設が困惑しており、張り紙をして注意をしたところ、差別ではないかとしてクレームを受けたりして強い措置をとることが難しく迷惑行為の風評や影響で、お客が減少して、施設の経営が傾き、ついに閉鎖の憂き目をみることになったというお話です。

 一部を上記記事から引用します。

 
「『不適切な行為はやめてほしい』といった内容の張り紙を何回かしました。それでも改善しないので、『××行為やめて』と、かなり強い文言の張り紙をしたこともあります。すると今度は店にLGBTの団体を名乗る方から、張り紙についてクレームのお電話をいただいたり、無言電話が立て続いたり、法務局の人権擁護の関係者が店に来て『この内容はちょっと…』というようなご指摘を受けたこともありました。店としてはゲイ差別をしている訳ではない。みんなが安心して利用できるようにしたかっただけなのに…」

 

  公衆浴場を規律する法律に、「公衆浴場法」という法律があります。

  その中にはこんな規定があります。

第三条 営業者は、公衆浴場について、換気、採光、照明、保温及び清潔その他入浴者の衛生及び風紀に必要な措置を講じなければならない。
 前項の措置の基準については、都道府県が条例で、これを定める。
第五条 入浴者は、公衆浴場において、浴内を著しく不潔にし、その他公衆衛生に害を及ぼす虞のある行為をしてはならない。
2 営業者又は公衆浴場の管理者は、前項の行為をする者に対して、その行為を制止しなければならない。
 第5条のほうは、公衆浴場の衛生面に着目した規定ですが、場合によっては性的行為を規制することも可能です。違反者に対しては拘留または過料の罰則もあります(10条)
 ただ基本的に衛生面からの規制のため適用範囲はおのずとその限度での限定があるため、なかなか難しい面があるとおもいます。
 第3条は、入浴者に何らかの義務を課すものではなく、営業者に「風紀に必要な措置を講じ」ることを義務づけるものです。
 同条2項で、条例への委任がされていますが、例えば長野県の条例ではこんなふうになっています。
 
 10歳以上の男女の混浴をさせないこと。
 個室内には、入浴に必要でないものを置かないこと。
 出入口の扉等に設置した窓からの個室の内部の見通しを妨げないこと。
 従業員に、風紀を乱すおそれのある服装及び行為をさせないこと。
 善良の風俗を害するおそれのある文書、広告、絵画、写真、装飾品等の物品を掲げ、又は備えないこと。
  これはなにを想定しているかというと、公衆浴場に名を借りた性風俗店営業(ソープランドのような店舗)を取り締まるための規制と考えられます。
  
 ほかには大声又は騒音を発する等他の入浴者に迷惑を及ぼす行為をさせないこと。」というものもあります。
 この規定は、同性間の性的行為を(間接的に)規制する趣旨というよりも、文字通り大声などの粗野な迷惑行為を想定しており、制定当時には、「同性間の性的行為」のような迷惑行為が想定されていなかったものと考えられます。しかし、明文で性的言動が除外されているわけでもないので、性的言動や性的行為が「他の入浴者に迷惑を及ぼす行為」にあたるという解釈は十分可能であり、営業者は、張り紙をしてそのような行為を戒めたり、制止することも可能であると考えられます。
 公衆浴場法で営業者は「風紀を講じる義務」を負っているわけですから、その趣旨に沿った張り紙による警告や注意、制止行為は、当然なしうるものと考えられます(ただし暴力はもちろんダメですが)。刑法の公然わいせつ罪の適用も考えられます(ただし、記事にもあるように証拠の確保が浴場の性質上難しいかもしれません。防犯カメラを設置することが難しいため)
 上記記事では張り紙の文言について、差別ではないかというクレームや法務局からの指導(?)もあったようですが、そもそも、入浴施設での性的行為や性的言動をしないように利用者に求めることは差別でもなんでもありません。
 文言を工夫して差別であると解されない警告文言にすることは十分可能です。
 それでもクレームを入れてくるような場合には、悪質なクレーマーとして毅然と対処すべきでしょう。
 
 また、爆サイなどの掲示板において、当該入浴施設において性的行為を勧誘したりするような書き込みについては、当該施設への営業妨害であるとして書き込みの削除や発信者情報の開示請求をすることも可能であると考えられます(具体的な事情にもよりますが)。
 
 このような問題でお悩みの事業者の方は、長野第一法律事務所に御相談ください。
 当事務所には、インターネット掲示板への書き込みに対する法的対処の経験が豊富な弁護士が在籍しています。

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